ストーカー事件
2002年8月著述
それはある日、突然起ったのでした。
4月8日(月) 部下の担当室長が私に大変やっかいな事件だと報告したのでした。
室長:朝、8時半頃に近くの神社の前で通勤途中に会社の若い女子社員が男に身体を触られそうになったのですよ。
私:そうか。 ではその女性社員に一緒に話をよく聞いてみよう。
女性社員:その男性は背広姿でサラリーマン風の感じでした。
体形は少し小太りで眼鏡をかけていました。 年齢的には30歳を少し超えた感じでした。
同じ人か今では分かりませんが、4月4日か5日頃に残業の帰り、7時半頃でしょうか、駅の横断歩道あたりで肩を軽くたたかれ、『つきあってくれないか』と声をかけられたんです。
私は付きまとわれているのではないかととても不安です。
4月9日(火) 翌朝も女性社員から又、報告がありました。
女性社員:昨日と同じ通りで朝、8時30分過ぎ頃に男と目が合い、見られていると思われたので走って会社に入ったのです。 私は本当に会社に来るのが憂うつで不安です。
私:通勤時間を少しずらしたらどうですか?
4月10日(水)女性社員から又、報告がありました。
時間を変えたのですが、8時40分頃、横断歩道のあたりで男の視線を感じました。 しかし、交通安全の対策でおまわりさんが歩いていたので、おまわりさんについて歩いて通り過ぎました。
私:それでは駅からの通勤経路を変更し、反対側の道から会社に来てはどうですか?
4月11日(木) 女性社員から通勤経路を変えたので、今度は男に会わなかったとの報告がありました。
4月15日(月)女性社員から驚くべき報告がありました。
女性社員:4月12日(金)の午後6時頃のことです。 帰ろうとしていた会社の玄関の前の木の下であの男が立っているではありませんか。 私はしばらくたって男がいなくなったのを見計らい、一目散で走って駅まで向かったのです。
室長:このままでは事態は悪くなる一方ですよね。 近くの交番に行って、ストーカー事件として報告しましょう。
私:そうだな。 埼玉のストーカー殺人事件のようなことにでもなったら、大変だ。
女性社員と室長と私の3人は会社の勤務時間が終わってから、早速近くの交番に向かったのでした。
巡査:どうされましたか?
室長は今までのいきさつを巡査に報告したのでした。
巡査:そうですか。 今までの状況では警察としても動き難いですな。
今度何かありましたら、気軽に連絡して下さい。 それから、自分の身は自分で守る必要もありますから防犯ブザーをお持ちになったら良いでしょう。
女性社員:母が家で持っていますので、早速それを身につけることにします。
4月16(火) 室長と相談し、当分の間、交替で誰かと会社の帰りはストーカーにあった女性社員を駅までエスコートすることにしたのでした。 今日は私の番でした。
いつもは寡黙な彼女は私に気を使ってか、積極的に話しかけてきました。
女性社員:お忙しい中、私のために申し訳ありませんね。
私:そんなことないよ。 上司が社員の身を守るのは当然のことだよ。
あっという間に時間は過ぎて、駅に着いたのでした。 私は目黒駅の近くの居酒屋で、
歓迎会があるのでそこで失礼したのでした。
4月17日(水)、18日(木)
駅からの通勤経路と時間を変えた効果があって、何事も起きませんでした。 会社の帰りは女性社員の友人と一緒に帰ったのでした。
4月19日(金)朝、今度は別の部下の室長が慌てて私に報告に来ました。
室長:今度は内の女性が会社の前の道路で狙われたんですよ。
私:え! 本当ですか? そんな馬鹿なことが!
室長と私は一緒に、その女性社員の話を聞いたのでした。
その女性も前の女性と同じ様にとてもおとなしい女性です。
ストーカーはストーカー行為をしても、声をあげないと思われるおとなしい女性を狙うのでしょうか?
話は次のような状況でした。
そこのコンビニエンスストアを過ぎた所で男が声をかけ、ついて来たんです。
女性社員:何ですか?
男:お友達になりたいんですよ。
その後もまとわりついてきたが、会社のガードマンがそれを見つけました。
ガードマン:何で内の女性に付いて来るんだ。
ガードマンが大声を上げたので、男は黙って、通り過ぎていってしまいました。
姿、形から判断して、前の女性に絡んだ男と同一人と思われます。
午後5時頃 私は先の交番に連絡しました。 ストーカーを牽制するために朝、会社の前におまわりさんにたってほしい旨をお願いしたのでした。
巡査:私一存では決められません。 決められた見回りもありますので、交番でなく、警察署の方に事情説明願います。
午後6時30頃 室長と私は警察署に出向きました。 そして警察署の二人の係官に今までのいきさつを詳しく話したのでした。
係官:セクハラ事件は毎日のようにありますよ。 聞いた範囲では男を連行できませんよ。
現行犯でなくては無理ですよ。
私:何も逮捕して下さいと言っているわけではないんですよ。
朝、8時30分頃に会社の前に立ち寄っていただき、ストーカーを牽制していただければということです。
事が起こってからでは遅いので、予防としてお願いしているのです。
係官:警察は警備保証会社ではないので民間のそのような要請を原則的には聞けないのですよ。
だが、検討してみましょう。 次に何かあったら警察署でなく、110番に連絡して下さい。
室長と私:分かりました。 どうぞ、よろしくお願いいたします。
4月21日(月)
8時20分 警察からは何の連絡もなく、結局巡査はこの日現れませんでした。
8時30分 ガードマンと私は2人して、会社の玄関前に立ち見張ったのでした。
会社の人たちは何事だろうといぶかりながら、挨拶して会社に入っていきます。
そこについにあの男が現れたのです。 私にとっては初めての男です。
会社の玄関前を通り過ぎようとしています。 男はグレーの背広を着て、眼鏡を着用し、小太りで、青い大きなバッグを肩にかけ、うつむきかげんで通り過ぎました。
ガードマンは大きな声でこの男に向かって言いました。
ガードマン:この辺で女性に声をかけるんじゃないよ。
その後、ガードマンは少し追いかけましょうかと私に言いました。
私:ガードマンさんは持ち場がありますから、私が付けてみますよ。
男はゆっくりした歩調で駅に向かっていきました。
私:これから何処に行くのだろう? 駅までの途中でストーカー行為をしないだろうな。
私は内心ドキドキしました。
男は駅に入り、渋谷方面のプラットホームに降りていきました。 私も後を付けていきましたが、出勤時間が迫ってきたので会社に帰ることにしたのでした。
4月22日(火)以降
男は朝の通勤時間に会社の前に現れなくなりました。 男の方が我々2人に見張られ、声をかけられるのを嫌って、今度は彼の方が駅への通勤時間と通勤経路を変えたのかもしれません。
私はストーカーにあった女性社員に自分の身は自分で守るべく防犯ブザーをプレゼントしたのでした。
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