バブル崩壊の後遺症


2003年6月

私が夜の9時頃、近所の喫茶店でパソコンの本を読んでいた時のことです。

一人の中高年と思われる人が何かあわただしく、私の隣に座ったのでした。

そして、自分の席に何かのテキストらしきものを置いたのでした。

彼はしばらく、落着かない様子でしたが、やがて、私に話しかけてきました。

彼:パソコンのお勉強ですか?

私:はいそうです。

彼:パソコンのお仕事をなさっているのですか?

私:そうです。ところで、あなたはそのテキストで、何を学習されているのですか?

彼:私は宅建(宅地建物取引主任)の勉強しているのです。

私:そうですか? 今は宅建の試験はとても難しくなっているのですよね。

彼:そうです。

私:試験に受かったら不動産のお仕事をされる予定ですか?

彼:まあ、そんなものです。

株で大損してしまって、何とかしようと勉強しているのですが、仕事で勉強時間が足りなくて。

私:そうですか。株で大損ってどうゆうことですか?

彼:バブルの頃に私は色々株式銘柄を調査・研究して、株をたくさん買ったんですよ。

そしたら、株がどんどん上がって、すごく儲かったんですよ。そうなると、欲が出て、持っている株

を担保にして、更に買い増していったんですよ。同じ株では上昇が止まってしまうので、その時点では割安と思われる株に乗り換えていったんですよ。

私:そうですか。 それでどうなったんですか?

彼:儲かって、儲かって、最盛期には時価評価が7億円までにいったのですよ。

そして、別荘地を数件、買ったんですよ。

現金にしておけばよかったんですが、もった

現金にしておけばよかったんですが、もったいなかったので、銘柄を変えていったのです。

その後、全体の株の評価が下がっても、やがて、持ち直すだろうと煩雑に売買を続けていったんですよ。ところが、株価が下がったまま、借金の返済期限がきて、手持ちの株を売って、借金を一部返したんですよ。

しかし、その後の暴落で、借金して買った株では借金を返せなくなってしまったのです。

元値に戻るだろうとの予測は外れるし、銘柄を変えても買った銘柄の株が又下がるという悪循環が続いたんですよ。

結局、バブルの崩壊で、借金を返したら、元の木阿弥になってしまったのですよ。

私:そうですか。それは大変でしたね。

私もバブルの崩壊で、手持ち株が大暴落して、殆ど資産価値がなくなってしまったのですよ。

ですから、その気持ちをよく理解できますよ。

彼:それから、別荘地は経費がかかるもんですね。

彼は連想ゲームの様に話題を変えたのでした。

私:どういうことですか。

彼:別荘地を買って、値上がりを期待したのですが、買った後に色々と経費がかかったんですよ。

別荘地なので、皆がそれぞれの区画を買ったのですが、その後、電気、ガス、上水道、下水道などの経費を協同で負担しなくてはならなくなったんですよ。私だけ後にしますというわけにもいかず、

1区画300万ぐらいかかったんですよ。

私は複数、別荘地を持っていたので、大変でしたよ。

結局、それも手放すことになったのですよ。

私:そうですか。それはそれは。

彼:ところで、この近所の大地主の話を知っていますか?

彼は別荘地の話から、連想して、今度は近在の土地の話に話題が転じたのでした。

私:何ですか?

彼:その大地主はバブルの時に土地が値上がりして、資産価値が飛躍的に上がったんですよ。

そしたら、銀行の人が土地を担保に融資を勧めたんですって。

なにしろ、それまで、土地神話で、銀行も一般の人も土地の値下がりを信じていませんでしたからね。

土地が上昇を続けている最中ですから、バスに乗り遅れまいという感じですよね。

大地主は銀行から多額の融資を受けて、更に近在の土地を買い占めたのですよ。

ところが、その後、バブルの崩壊で、株式のみならず、不動産も大暴落したのですよ。

不動産は株と違って、高額ですし、売る時にはすぐには売れませんからね。

結局、土地は借金を大幅に下回る価格まで、下がってしまったのですよ。

金利はかさむし、借金の期限は来るしで、結局、その大地主は先祖からの土地まで、手放さなくなってしまったんですよ。

それで、今ではアパート暮らしですよ。

私:本当ですか。バブル崩壊でやられたのは建設業者や銀行などの企業だけではないんですね。

個人でも近所にそんな人がいるんですか。

彼:そうですよ。とにかく、借金は恐いですね。

本当に、現金にしておけば良かったんだが。

私:殆どの人がバブルの時には株価、土地、物価の高止まり、もしくは上昇を信じていたのですからね。インフレはあっても、給料や物価の下がるデフレなんて考えもしなかったのですから。

彼:ところで、最近ここの喫茶店で、聞いた話なんですが、証券会社を退職した人で、年金生活をしながら、コンサルタントをしている人がいるんですよ。

その人は毎月コンサルタントと自分の株式の売買で、年間100万円ぐらい稼いでいるんですって。

月にコンサルタント料で5万円、株の売買で5万円位そうですよ。

とにかく、その人は株を大量に手持ちしないだそうですよ。

私:大量に手持ちしなければ、暴落には関係ないですからね。

彼:そうなんですよ。上がりそうな株を事前に買っておいて、人にも勧めて、少し値上がりしたら、すぐに売って、実利を得てしまうのだそうですよ。

これを毎月繰り返しているそうですよ。

事前に買っておいた株を人に勧めて、儲けるなんてずるいですよね。

私:さあ、どうでしょう。 必ず、値上がる保証はないんですから、何とも言えませんね。

彼の声は大きくて、私達の会話は回りの人に筒抜けでした。

回りの人は夜間で、勉強している人が多く、迷惑している様子がありありでした。

しかし、彼は久しぶりに知らない人と話しが出来て、うれしいのか、大声で、話が止まりません。

彼:ここの喫茶店でも菓子パンを売っていますが、スーパーマーケットのパンがあまりおいしくないのはどうしてか、知っていますか?

私:さあ、知りません。

彼:それは酵母の混ぜかたが少ないからですよ。

話がどんどんと飛んでいきます。

私は回りの人が気になって、この場の席を立つことにしたのでした。

私:申し訳ありませんが、ここで失礼します。

どうぞ、ごゆっくりなさって下さい。

私にとっては、殆ど予定したパソコンの勉強が出来なかったのですが、ここで聞いた話は人生の縮図を垣間見たようで、とても印象に残ったのでした。

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